旅館のインバウンド集客 完全ガイド|箱根・湯河原発の地域旅館がOTA依存から脱却する実務
「Booking.comと楽天トラベルからの予約は埋まる。ただ、手数料を引くと利益が薄い」 「海外ゲストは増えたが、自社サイトからの直予約はほぼゼロのまま」 「英語ページを一度作ったが、放置のまま2年が経ってしまっている」
箱根・湯河原・小田原エリアの旅館オーナーから、私たち契(CHIGIRI inc.)にお寄せいただくご相談で、特に多いのがこの3つです。 インバウンド需要そのものは確実に戻ってきているのに、**「集客はできているのに、利益と顧客リストが手元に残らない」**という、構造の歪みを抱えた旅館が少なくありません。
この記事では、地域旅館がインバウンド集客を本気で軌道に乗せるために、押さえるべき実務要点を整理しました。 小田原を拠点に箱根・湯河原・伊豆エリアの旅館・観光事業者を支援してきた中で、現場で繰り返し見てきた論点を中心にお伝えします。 全国の中小旅館・地域宿泊施設のオーナー、特にOTA(オンライン旅行予約サイト)依存から脱却して直予約比率を上げたい経営者に向けた内容です。
まず前提:旅館インバウンド市場の現在地
施策を考える前に、いま地域旅館が立たされている市場環境を一度整理しておきます。 ここを飛ばすと、施策が「他館に倣った真似」で終わってしまうからです。
インバウンド需要は構造的に戻り、伸びている
観光庁『宿泊旅行統計調査』では、宿泊者数の動向や外国人延べ宿泊者数が継続的に公表されており、コロナ禍以降にインバウンド需要が回復・拡大基調で推移していることが報告されています(出典:観光庁『宿泊旅行統計調査』)。 日本政府観光局(JNTO)の『訪日外客統計』でも、訪日外国人数の月次推移が国別に公表されており、東アジア・東南アジア・欧米豪のそれぞれで構成比が変動しながら、全体としては高水準で推移しています(出典:JNTO『訪日外客統計』)。
ここで重要なのは、単に「外国人が増えている」という話ではありません。 観光庁『訪日外国人消費動向調査』では、訪日客一人あたりの消費単価や宿泊費の構成比が公表されており、宿泊単価そのものが上振れする傾向が示されています(出典:観光庁『訪日外国人消費動向調査』)。 つまり、ボリュームと単価の両輪で需要が伸びているフェーズだということです。
神奈川県西部の旅館にとっての意味
神奈川県観光協会、および神奈川県『観光客消費動向等調査』では、県内エリア別の観光客動向が継続的に整理されています(出典:神奈川県観光協会/神奈川県『観光客消費動向等調査』)。 箱根・湯河原・小田原エリアは、東京から1時間半圏内で本格的な温泉と自然を体験できる場所として、特に欧米豪・東アジアのゲストに知名度が積み上がってきたエリアです。 新幹線・小田急ロマンスカー・東海道線という複数の鉄道アクセスを持つ立地優位は、構造的に変わりにくいと考えてよいでしょう。
つまり、需要側の追い風は構造的に存在します。 それでも多くの地域旅館が「集客はできているのに利益が薄い」と感じているのは、収益構造の側に課題があるということです。
OTA依存リスクの正体
現場のオーナーから最も多くお聞きするのが、OTAへの依存度が高すぎることへの懸念です。 予約導線がほぼOTA経由になると、以下のような問題が積み上がっていきます。
- 手数料率分の利益が、稼働を上げるほど絶対額として膨らむ
- 顧客情報がOTA側に蓄積され、自館に顧客リストが残らない
- 価格・在庫の主導権を握りにくく、ダイナミックプライシングの裁量も狭まる
- レビュー対応・順位対策・キャンセル対応の運用工数が増える
- OTA側のアルゴリズム変更や手数料改定の影響を受けやすい
OTAを否定する話ではありません。 新規ゲスト・海外ゲストの認知獲得チャネルとしては、OTAは引き続き強力です。 本記事で扱うのは、**「OTAを使いつつ、自社サイト経由の直予約比率を中長期で少しずつ上げていく」**ための実務です。
重要ポイント1:自社サイトを「予約導線の土台」に組み直す
インバウンド集客の議論は、SNS・広告・OTAの話題から入りがちですが、最初に手を入れるべきは自社サイトです。 自社サイトが直予約を受けきれる構造になっていなければ、外側でいくら認知を取っても、結局OTAに流れてしまいます。
「客室紹介サイト」から「予約のきっかけを作るサイト」へ
従来の旅館サイトの多くは、客室・料理・温泉の紹介に紙幅の大半を割く構成でした。 これは紙のパンフレットの延長線上にある設計で、すでに館名を知っているゲストや、リピーターには有効です。
しかし、これから日本旅行を検討する海外ゲストにとっては、「数ある選択肢の中で、なぜここなのか」が最初の数秒で示されないと、比較検討の土俵にすら上がれません。 旅館サイトで最初に問い直すべきは、このサイトの役割定義そのものです。
具体的には、トップページの最初の画面(ファーストビュー)に、次の3つの情報を必ず含めるところから始めます。
- どこにあって、何が体験できる旅館なのか(地域・体験価値の明示)
- 直予約のメリット(公式特典・最安値保証・限定プランなど)
- 予約導線(CTA:「空室・料金を見る」「英語で予約する」など)
直予約特典は「数字で示せる」ものに
直予約比率を上げるための最も効きやすい打ち手が、直予約特典です。 ただし「公式サイトがお得です」という曖昧な表現だけでは、ゲストの行動は変わりません。
実務では、次のような数字で示せる特典を組み合わせて設計します。
- OTA経由より一定額の割引(例:1泊あたり◯◯円OFF)
- ウェルカムドリンク・館内利用券などの実物特典
- チェックイン・チェックアウト時刻の柔軟化
- 公式サイト限定の客室タイプや、希少な貸切風呂枠の優先予約
景品表示法の趣旨に則り、**「絶対に最安」「業界一の特典」**のような断定表現は避けます(参考:消費者庁『景品表示法』)。 あくまで「公式サイト経由の場合の特典」「現時点の標準的なご案内」という位置づけで、数字と条件を明示します。
予約エンジンは「離脱しない」設計を優先
自社サイトに予約エンジン(PMS連携の予約システム)を組み込む際、デザイン以上に重視したいのが離脱率です。 具体的には次の点を確認します。
- スマートフォンで、3ステップ以内に予約完了まで到達できるか
- 多言語表示・多通貨表示に対応しているか
- 海外発行クレジットカード(特に銀聯・JCB・AMEX)に対応しているか
- 入力フォームの項目数が必要最小限に絞られているか
- エラーメッセージが多言語で分かりやすく表示されるか
予約エンジンの選定は、**「機能が多いシステム」よりも「ゲストが迷わず完了できるシステム」**を優先します。 旅館側の管理画面の使いやすさも、運用継続のためには必須要件です。
重要ポイント2:多言語サイトの設計と運用
旅館サイトを刷新する際、最も投資対効果が読みにくいのが多言語対応です。 ただ翻訳すれば良いものではないため、設計段階で整理しておくことが、後々の運用負担を大きく左右します。
「機械翻訳プラグイン」だけでは戦えない
多言語対応の最も簡易な手段として、ブラウザの自動翻訳や、サイトに埋め込む翻訳プラグインがあります。 費用は最小ですが、以下のような問題が現場で頻発します。
- 旅館特有の用語(「会席」「貸切風呂」「夕朝食付き」「ベジタリアン対応」など)が誤訳される
- 料金・キャンセルポリシーの数字や条件が崩れる
- SEO上、各言語版が独立したページとして評価されにくい
- 構造化データやメタ情報が日本語のまま残る
短期的なコストは下がりますが、**「読まれない多言語ページ」**が量産されるリスクが高い、というのが現場の実感です。
推奨は「優先2言語+人手翻訳+専用URL」
私たちが地域旅館にご提案する標準パターンは、次の構成です。
- 対象言語の優先順位を絞る——英語+簡体字中国語、または英語+韓国語、の2言語から始める
- 専用URL(/en/、/zh/ など)を持たせる——SEO評価が言語ごとに積み上がる構造にする
- 重要ページ(トップ・客室・料理・予約・アクセス・FAQ)は人手翻訳で品質を担保する
- 二次ページ(コラム・周辺観光など)は機械翻訳+人手チェックでコストとカバレッジのバランスを取る
- hreflangタグを正しく設定し、検索エンジンに言語別ページを正しく認識させる
優先言語の選定は、自館の既存ゲスト構成と、JNTO『訪日外客統計』の国別構成比を突き合わせて判断します(出典:JNTO『訪日外客統計』)。 箱根・湯河原エリアでは、欧米豪比率が比較的高い館は英語優先、中華圏比率が高い館は簡体字優先、というように、自館の実態に合わせます。
「多言語」だけでなく「多文化」対応も設計する
翻訳が正しくても、文化的な配慮が抜けていると、ゲストの満足度は上がりません。 旅館サイトで配慮しておきたい多文化要素には、次のようなものがあります。
- 食事:ベジタリアン・ヴィーガン・ハラル・グルテンフリー・アレルギー対応の可否を明記
- 入浴:タトゥー対応の可否、貸切風呂の有無、混浴の有無を明記
- 支払い:海外発行カード対応、現地通貨表示、現金可否
- アクセス:英語アナウンスのある最寄り駅、駅からの送迎可否、荷物の事前送付対応
- 言語サポート:スタッフの対応言語、翻訳デバイスの有無
これらの情報は、FAQページや「Before You Arrive」ページにまとめておくと、海外ゲストの不安を事前に解消できます。 予約前の問い合わせを減らすという意味でも、運用工数の削減につながります。
重要ポイント3:多言語SEOで「比較検討段階」を取りに行く
自社サイトが整ったら、次は多言語SEOで検索流入を作っていきます。 インバウンドゲストの検索行動は、国内ゲストとは別の経路を辿るため、専用の設計が必要です。
海外ゲストの検索キーワードは「体験ベース」
海外ゲストが旅館を検索する際のキーワードは、館名・地名の前に、体験ベースの英語キーワードが多いという特徴があります。
例えば、箱根・湯河原エリアの場合、次のようなキーワードが想定されます。
- “ryokan with private onsen near Tokyo”
- “traditional Japanese inn Hakone”
- “Yugawara hot spring ryokan English speaking”
- “kaiseki dinner ryokan with mountain view”
- “ryokan tattoo friendly Hakone”
これらは、「日本のどこに行くか」を決める前段階の検索で、比較検討段階のゲストを早めに捕まえるためのキーワードです。 ここで検索結果に出ていないと、いくらOTAで露出があっても、自社サイトには辿り着きません。
多言語SEOの基本3点セット
地域旅館の多言語SEOで、最初に整えるべき基本3点は次の通りです。
- hreflangタグの正確な設定——日本語・英語・中国語の各ページが、検索エンジンに正しく言語別ページとして認識される
- 言語別のメタタイトル・メタディスクリプション——機械翻訳ではなく、各言語の検索行動に合わせた表現で書く
- 言語別の構造化データ——LodgingBusiness・Hotel・FAQPageなどを各言語で実装
これに加えて、英語ブログや英語FAQで、体験ベースのロングテールキーワードを継続的に拾っていく運用が、中長期の流入を作ります。 1記事1記事は地味ですが、半年〜1年で確実に積み上がる施策です。
コンテンツの「現地目線」が差別化要因になる
海外ゲストの検索結果には、OTA・大手メディア・旅行ブログが上位を占めがちです。 個別の旅館サイトが勝負しやすいのは、**「現地でしか書けない情報」**の領域です。
具体的には、次のようなコンテンツが評価されやすい傾向があります。
- 旅館から徒歩・車で行ける、地元目線の周辺おすすめ
- 季節ごとの天候・服装・アクティビティの実情
- 公共交通機関での具体的なアクセス手順(写真付き)
- 日本文化の体験(茶道・書道・季節行事など)の英語解説
- 食材・料理の文化背景の英語解説
地域に住み、現地を毎日歩いている事業者だからこそ書ける内容は、東京の制作会社や海外の旅行メディアには真似できない強みです。 「同じ目線で住み、五感で浴び、歴史や街を学ぶ」——契のフィロソフィでもありますが、これがそのままSEOの差別化要因になります。
重要ポイント4:海外SNSは「国別チャネル」を選んで使う
多言語サイト・多言語SEOと並んで、海外ゲストの認知獲得チャネルとして重要なのが海外SNSです。 ただし、「海外向けにSNSをやる」という大雑把な発想では成果が出にくく、国別・客層別にチャネルを選ぶ必要があります。
中華圏は小紅書(RED)と微信(WeChat)
中国本土からのゲストを意識する場合、主要チャネルは**小紅書(RED)と微信(WeChat)**です。
小紅書は、20〜30代の女性を中心に、ライフスタイル・旅行・グルメ・コスメなどの口コミが集まるプラットフォームで、月間アクティブユーザー規模は中国本土で大規模に推移していると公表されています(最新値は公式公表ベースでご確認ください)。 旅館にとっては、**「日本の温泉旅館を検討するゲストの第一情報源」**として、近年特に重要度が増しているチャネルです。
微信は、メッセージング・決済・ミニプログラムを含む総合プラットフォームで、公式アカウント(公众号)の運用と、決済対応(WeChat Pay)が、中華圏ゲストの利便性を大きく左右します。
中華圏向けSNS運用の実務では、次の点を押さえます。
- 単純な日本語投稿の翻訳ではなく、中華圏ゲスト目線のストーリー設計
- 写真・動画は縦型・スマートフォン視聴前提で制作
- 文章は簡体字・繁体字を市場に応じて使い分け
- 投稿時間帯は中国・台湾・香港のタイムゾーンを意識
- インフルエンサー(KOL)との連携も、予算次第で選択肢に
欧米豪はInstagramとTikTok、補助的にYouTube
欧米豪ゲストを意識する場合、主要チャネルはInstagram・TikTok・YouTubeです。
Instagramは、ビジュアルベースの認知獲得・予約前の不安解消に効きます。 旅館の場合、客室・料理・温泉の写真だけでなく、スタッフ・周辺風景・季節の移ろいを継続的に発信していくことで、「行ってみたい」を醸成します。
TikTokは、短尺動画で旅館の体験を直感的に伝えるチャネルとして、海外ゲストの旅行検討段階で存在感を増しています。 無理に流行のトレンドを追わず、**「日本らしい体験の切り取り」**を淡々と積み上げる方が、旅館の場合は中長期で効きます。
YouTubeは、検索エンジン的な使われ方をするため、**「ryokan tour」「Japanese onsen experience」**のような体験キーワードで動画を残しておくと、長期的な流入源になります。
韓国向けはNAVERとInstagram
韓国からのゲストを意識する場合、検索行動の中心はNAVERで、SNSはInstagramの利用率が高い傾向があります。 NAVERブログ・NAVERカフェへの露出と、Instagramの韓国語キャプション運用を並行するのが現実的です。
韓国市場は、近距離リピーター・週末旅行需要が比較的厚く、**「リピートしたくなる体験設計」**との相性が良い市場です。
重要ポイント5:Googleマップ(MEO)で「現地検索」を取る
意外と抜けがちなのが、**Googleマップでの最適化(MEO)**です。 海外ゲストも、日本到着後・現地移動中の検索では、Googleマップを頻繁に使います。
Googleビジネスプロフィールの多言語整備
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の整備は、以下の点を多言語で押さえます。
- 屋号・住所・電話番号(NAP情報)の正確性
- 業種カテゴリの正確な設定(「旅館」「Ryokan」「温泉旅館」など)
- 営業時間・チェックイン/チェックアウト時刻
- 写真(客室・料理・温泉・外観・周辺)を最低30枚以上
- 説明文の多言語登録
- 投稿機能による季節情報の更新
- レビューへの多言語返信
レビュー対応では、英語・中国語のレビューに対して、その言語で誠実に返信することが、他館との差別化につながります。 返信の蓄積そのものが、後から来るゲストへの安心材料になります。
MEO施策の詳細
Googleマップ最適化の実務的な手順は、業種別の細かな違いがあります。 旅館・宿泊業に特化したMEO設計の考え方は、別記事の小田原のMEO対策完全ガイドで詳しく整理しています。 基本的な考え方は地域・業種を問わず共通しますので、宿泊業のオーナーにも参考になる内容です。
重要ポイント6:OTA・直予約・代理店の「役割分担」を再設計する
ここまでの施策を実行しても、OTA・直予約・代理店の使い分けが整理されていないと、コストと工数の最適化が進みません。 各チャネルの役割を明確に定義することが、OTA依存脱却の土台です。
各チャネルの「役割」を言語化する
私たちが旅館オーナーと最初に整理するのは、**「誰を、どのチャネルで、何のために集めるか」**です。 チャネルごとの典型的な役割分担は、次のような形になります。
| チャネル | 主な役割 | 主なゲスト層 |
|---|---|---|
| 海外OTA(Booking等) | 海外ゲストの認知獲得 | 比較検討中の海外層 |
| 国内OTA(楽天等) | 国内新規・ポイント客 | 国内の幅広い層 |
| 自社サイト | リピーター・直接予約 | ファン層・特典目的 |
| 海外SNS | 比較検討前の認知醸成 | 海外の検討段階層 |
| 旅行会社・代理店 | 団体・特殊ニーズ | 法人・団体客 |
| 紹介・口コミ | 質の高いリピート・新規 | 既存ゲスト経由 |
この整理ができると、**「どのチャネルにいくら手数料・広告費を払うのが妥当か」**を判断する基準が立ち上がります。
直予約比率の現実的な目標設定
直予約比率は、いきなり高い目標を立てないことが重要です。 現状の直予約比率を起点に、四半期ごとに数ポイントずつ積み上げる現実的な目標を置きます。
私たちが地域旅館の支援で参考にしている考え方は、次の通りです。
- 現状把握:チャネル別の予約件数・売上・手数料コストを月次で可視化する
- 目標設定:3〜6ヶ月単位で、直予約比率を数ポイント上げる現実目標を置く
- 施策連動:自社サイト・SEO・SNS・MEOの各施策を、直予約比率向上の指標で評価する
- レビュー:四半期ごとに、効いた施策・効かなかった施策を整理する
「OTA依存脱却」を旗印にすると、現場が疲弊しがちです。 **「OTAは使い続けつつ、自社経由の比率を少しずつ厚くする」**という、現実的な進め方が長続きします。
重要ポイント7:データを見て、毎月小さく改善する
インバウンド集客は、一度仕組みを作って終わりという性格の仕事ではありません。 市場・競合・為替・OTAのアルゴリズムは常に変動しており、毎月の小さな改善を積み上げる運用が前提になります。
最低限見るべき数字
地域旅館の場合、最低限把握しておきたい数字は次の通りです。
- チャネル別予約件数・売上(OTA別・自社サイト・電話・代理店)
- チャネル別手数料額・実質売上
- 自社サイトのセッション数・予約完了率・離脱率
- 言語別のサイト流入・予約数
- Google検索からの主要キーワード流入
- Googleビジネスプロフィールの閲覧数・ルート検索・電話タップ数
- 主要OTAのレビュー件数・平均スコア
- 各SNSのフォロワー数・エンゲージメント
これらの数字を、月次レポート1枚に集約し、経営判断に使える状態にしておくことが重要です。 数字を取るためのツールにこだわるよりも、**「毎月見て判断する習慣」**を組織に根付かせる方が、はるかに大きな差になります。
改善サイクルは「小さく・早く」
毎月のレビューでは、大きな施策ではなく、**「小さく試して、効いたら広げる」**を繰り返します。
- 自社サイトのCTA文言を変えて、クリック率が上がるか試す
- 直予約特典の中身を変えて、直予約比率が動くか試す
- 海外SNSの投稿テーマを変えて、エンゲージメントが上がるか試す
- メタディスクリプションを書き換えて、検索順位が動くか試す
- レビュー返信のトーンを変えて、新規予約への波及があるか観察する
1ヶ月単位で見ると小さな変化でも、12ヶ月積み上がると、まったく違う成果になります。 逆に、**「大きな施策を年1回だけやる」**運用は、効いたかどうかすら検証できないまま終わりがちです。
重要ポイント8:業者選びで失敗しないための6つの観点
ここまでの実務を、すべて自館の人員で回すのは現実的ではありません。 多くの旅館では、Web制作・SEO・SNS運用・写真撮影などの一部または全部を、外部のパートナーに委ねることになります。 業者選びで失敗しないために、以下の6つの観点を整理しておくことをおすすめします。
観点1:観光・宿泊業の支援実績
汎用的なWeb制作会社よりも、観光・宿泊業の支援実績がある会社を選ぶ方が、立ち上がりが早い傾向があります。 業種特有の用語・運用・OTA連携の経験があると、毎回ゼロから説明する負担がなくなります。
観点2:地域性への理解
東京の大手制作会社にも強みはありますが、地域の気候・文化・観光資源・周辺事業者を理解している会社の方が、ローカルSEOとコンテンツの厚みでは有利です。 「現地に何度足を運んでくれるか」も、選定の重要な判断材料になります。
観点3:多言語・多文化の運用体制
多言語対応をうたう会社は多いですが、実際に運用フェーズで翻訳・チェック・更新を回せる体制があるかは、契約前に確認すべきポイントです。 初期構築だけで運用が止まる多言語サイトは、半年で陳腐化します。
観点4:SEO・SNS・広告・写真までの一気通貫
ホームページ単独ではなく、SEO・SNS・広告・写真・MEOまでを一気通貫で設計できる会社の方が、施策の整合性が取りやすく、運用工数も削減できます。 個別発注は、見積もりは安く見えても、結局情報が分断してコストが膨らみがちです。
観点5:景表法・薬機法など法令配慮
旅館サイトの表現は、景品表示法・特定商取引法・旅館業法など、複数の法令配慮が必要です。 「絶対」「最安」「日本一」などの誇大広告ワードを平気で使う会社は、後々のトラブルリスクが高いと考えてください(参考:消費者庁『景品表示法』)。
観点6:契約の透明性と「成果」の定義
最後に、契約条件の透明性は必ず確認します。 納品物・運用範囲・更新頻度・追加費用・契約期間・解約条件の明記、そして**「成果」をどう定義しているか**の事前すり合わせが、後の認識ずれを防ぎます。
契が地域旅館のインバウンド集客でご一緒できること
ここまで読んでいただいた方には、「結局どこに頼めばよいのか」が次の論点になると思います。 私たち契(CHIGIRI inc.)は、地域旅館のインバウンド集客支援にあたって、次の点を大切にしています。
現地・現物・現場主義
契は、小田原を拠点に箱根・湯河原・伊豆エリアの観光業を支援しています。 現地に足を運び、施設・周辺環境・スタッフ・お客様の声を、五感で確かめたうえで設計に入る——これは、東京の制作会社にはなかなか真似できない強みです。 「北条氏の時代から人と物が交わった小田原・箱根」という土地の歴史と、東海道の宿場町だった小田原が旅人を迎え、見送り続けた歴史も、サイトの言葉選びに織り込んでいきます。
観光・宿泊業に必要な隣接領域までカバー
ホームページ単独の制作だけでなく、多言語対応・OTA運用・写真撮影・SNS運用・広告運用・MEOまで、観光・宿泊業に必要な隣接領域をワンストップで設計できる体制を整えています。 1つのチームで通すと、サイトと運用が初めから整合します。 箱根のWeb制作についての詳細は箱根のホームページ制作ガイド、湯河原のWeb制作については湯河原のホームページ制作ガイドに、それぞれの地域特性を踏まえた論点を整理しています。
「成果につながる構造」を最優先に
私たちは、見た目の美しさよりも、事業上の成果につながる構造を最優先に考えます。 それは決して「派手さがない」という意味ではなく、写真・コピー・導線・SEO・SNS・運用までを通したときに、最終的な数字が動くサイトと運用を作るという意味です。
損得でない信頼を積み、人の役に立ち続ける。 目の前の困りごとを解決して、その「ありがとう」の対価として、役に立ち続ける。
このフィロソフィを、旅館のインバウンド集客という事業領域でも、変わらず大切にしています。
[CTA: 旅館のインバウンド集客・Web刷新・多言語化に関するご相談はお気軽にどうぞ]
よくある質問
Q. インバウンド向けに、まず何から手をつけるべきですか?
A. 現状把握から始めることをおすすめします。チャネル別予約件数・売上・手数料の見える化、自社サイトの言語別流入の確認、Googleビジネスプロフィールの整備状況のチェック、この3点を整理するだけで、優先すべき施策が自然と見えてきます。いきなり多言語サイトの全面刷新やSNS新設に手をつけると、運用が回らずに止まりがちです。
Q. 多言語サイトは英語と中国語、どちらを優先すべきですか?
A. 自館の既存ゲスト構成と、JNTO『訪日外客統計』の国別構成比を突き合わせて判断します。箱根・湯河原エリアの場合、欧米豪比率が高い館は英語優先、中華圏比率が高い館は簡体字優先になる傾向があります。両方を中途半端に作るより、まず1言語を作り込んで、半年後に2言語目を追加する方が、運用も安定しやすいです。
Q. OTA経由の予約は、ゼロを目指すべきですか?
A. ゼロは目指さなくて構いません。OTAは新規ゲスト・海外ゲストの認知獲得チャネルとして強力です。健全な目安として、直予約比率を中長期で少しずつ高めていく方向で運用するのが現実的です。具体的な目標比率は、施設規模・客層・市場環境によって異なりますので、現状起点で四半期ごとに設定する形をおすすめします。
Q. 海外SNSは、どのチャネルから始めるべきですか?
A. 自館の主要ターゲット国によります。中華圏ゲストが多い館は小紅書(RED)、欧米豪ゲストが多い館はInstagram、韓国ゲストが多い館はNAVERとInstagram、というように、客層に合わせて1チャネルから始めるのが現実的です。すべてのチャネルを同時に立ち上げると、運用が破綻しやすくなります。
Q. 多言語SEOの効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
A. 半年〜1年スパンで見るのが現実的です。SEOは、施策実行から検索順位に反映されるまでに時間がかかる施策です。ただし、Googleビジネスプロフィールの整備やSNSの運用は、より早く成果が見え始めることもあります。施策ごとに「成果が見えるまでの時間軸」が違うことを、最初に共有しておくと、運用が落ち着きます。
Q. 自館のスタッフが英語・中国語を話せませんが、インバウンド集客は可能ですか?
A. 可能です。多くの中小旅館で、スタッフの語学力に頼らない運用が現実的に行われています。具体的には、翻訳デバイス(ポケトーク等)の常備、英語・中国語の館内案内の整備、チェックイン時のFAQシートの多言語化、外部の電話通訳サービスの活用などです。サイト側で事前情報を充実させておくと、来館後のスタッフ負担も大きく減ります。
Q. 写真撮影は、契で手配してもらえますか?
A. はい、プロカメラマンの手配からお引き受けできます。旅館のインバウンド向け写真では、客室・料理・温泉・スタッフ・周辺風景の5種類を季節ごとに押さえておくのが理想です。海外ゲスト目線では、「人が写っている写真」「文化体験の写真」も重視されますので、撮影プランの段階から、海外配信を意識した設計をご提案できます。
おわりに:地域旅館のインバウンド集客は「地域全体への投資」でもある
地域旅館のインバウンド集客は、単に1施設の販促ツールを作る話にとどまりません。 ゲストから見れば、1つの旅館の体験は、「日本の温泉地」というブランド体験の一部として記憶されます。
小田原は、東海道の宿場町として、戦国の北条氏の時代から、旅人を迎え続けてきた街です。 その歴史の延長線上で、地域旅館のインバウンド集客を整えていく仕事は、私たち契にとっても本質的な仕事だと感じています。
ご相談は、契のSEO・MEO支援、Web制作、マーケティング支援の各サービスページからどうぞ。 地域特性を踏まえたWeb設計の論点は箱根・湯河原、Googleマップ集客は小田原のMEO対策で扱っています。
運営者情報
- 屋号:株式会社契(CHIGIRI inc.)
- 拠点:神奈川県小田原市
- 対応エリア:小田原市・箱根町・湯河原町・真鶴町・南足柄市・神奈川県西部全域、および全国対応案件
- 事業内容:ホームページ制作、Webマーケティング、SEO・MEO支援、SNS運用、広告運用、コンテンツ制作、インバウンド集客支援
- お問い合わせ:お問い合わせフォーム
※本記事に記載する「傾向」は、当社が小田原・箱根・湯河原エリアで2025〜2026年に支援した中小事業者・観光関連事業者の案件から抽出した一般傾向であり、特定の成果・効果を保証するものではありません。景品表示法の趣旨に則り、効果の断定・保証表現は避けて記載しています(参考:消費者庁『景品表示法』)。観光統計の最新値については、観光庁・JNTO・神奈川県観光協会の公式ページにてご確認ください。